合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~
夢(三)
「おとーさーん」
「……」
さすがの瑞希にも父は無反応だ。
しかし瑞希は少し考えた後、新聞を読む父の懐に潜り込む。
父は眉間のしわをさらに深くしたものの、膝にちょこんと座る瑞希に何も言おうとはしない。
そしてまた勝ち誇ったような瑞希と目が合った。
「!」
私は走って玄関から飛び出す。
「お嬢様、行かれるんですか?」
振り返った先に、ルカがいる。
そして目の前にはあの日、見た店がある。進みたくない、見たくないと思うのに体が勝手に進み出す。
小窓からは、キースの腕に自分の腕を絡め、商品を楽しそうに選んでいる二人がいた。
「いやだ」
大粒の涙がぽとぽと落ちる。
何もかも、欲しいものは全て自分の物にはならない。そんな現実。
「姉さんがいけないのよ、ちゃんと欲しいものは欲しいと言わないから」
小窓から瑞希の、ミアの声が聞こえた気がした。
そしてまた大嫌いなあの勝ち誇ったような笑みを浮かべている。