合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~

二人の時間(三)


 私の抗議など全く意に介さず抱き上げたままキースは器用にドアを開け、進んでいく。

 すれ違う騎士や侍女たちが、頭を下げながらも、何が起きたのかとやや怪訝そうな顔で見ている。


「キース様」

「恥ずかしいなら、何も見えないように顔を埋めてればいいんだよ」

「そういう問題ではないと思うんですが」

「ソフィアの願いなら、何でも聞いてやりたいが、これだけはダメだ」

「過保護すぎます」

「ああ、そうかもな」


 抱きかかえた私の顔をキースが覗き込む。あまりの近距離に、私はキースの肩に顔を埋める。


「うん、それでいい」


 心臓の音がこれ以上もなく耳に付く。

 夜風は涼しいはずなのに、顔だけではなくキースに触れている全ての面が熱く感じた。


「ほら、ソフィア、馬車についたよ」


 御者が開けた馬車に、キースは私を抱きかかえたまま乗り込む。


「もう着いたなら、おろして下さい」

「馬車は揺れて危ないから、ダメだ」
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