合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~

合わせ鏡の呪縛(前)(七)


 答えが分かっていながらも、あえてミアに尋ねる。


「わたしが……朝早く領地を出発したから、きっと行き違いになってしまったのだと思うわ」


 視線を合わせることなく、ミアが答える。

 ミアは何度か視線を動かしティーカップに手をかけてみたり、離してみたりと落ち着きがない。

 まさかグレンが自分を追いかけて領地まで行くなどと、思ってもみなかったのだろう。

 その挙動不審な態度は、嘘を付いてますと言わんばかりだ。


「ミア、このお茶どうしたの?」


 ルカはミア付きの侍女がいないから、あとで茶を持ってきてくれるといっていたのに、すでに私たちの前にはティーカップに注がれたお茶が湯気をたてている。

 まだ淹れたてらしいそのお茶は、何かが私の中に引っかかった。


「こ、これは、わたしが姉さまのために淹れたものですわ。せっかく淹れてみたので飲んでくださいな」


 見たところは本当に普通のお茶のようだが、ミアがわざわざ私のためにお茶を淹れるなんて。

「でも姉さま、ホントに風邪で倒れたのですか?」

「ええ、もちろんよ。変なこと聞くのね、ミアは。そうだ、これ、ありがとう。キース様から頂いたわ。私のためにあなたも一緒に選んでくれたなんて、私うれしいわ」


 にこりと笑いながら、身に着けたペンダントをミアに掲げて見せる。
< 177 / 211 >

この作品をシェア

pagetop