合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~
3章

現実

「おはようございます、ソフィアお嬢様、今日も良い天気ですよ」

 侍女のルカがそう言いながら、カーテンを手早く開けた。初夏に差し掛かり、日差しがだんだんと強くなってきた。

 窓からは大きな庭園が見渡せ、木々が青々と茂っている。

 しかし、ここに蝉の声はない。この世界には魔物までおり、前の世界の生態とはだいぶ違うようだ。

 それでも、蝶やカエルといったものは、この庭で見かけたことがある。

 似ているようで、まったく一緒でないというコトなのだろう。

「おはよう、ルカ」

「いよいよ、今日ですねお嬢様」

「いよいよ? 今日? 今日、何か予定なんて入っていたかしら」

「えー。覚えていらっしゃらないのですか? 今日はグレン様が、お見えになる日ですよ」

「ああそういえば、昨日家令が言っていたわね。お父様にも話があるから、皆で昼食をと手紙に書かれていたと。でも、それで、何がいよいよなの?」

「それ、本気でおっしゃっているんですか」

「本気も何も、ただ皆で話しながらご飯をということでしょ」

「それは確かにそうなのですが、そういうことじゃないじゃないですか」

「え、違うの?」

 首をかしげると、ルカがありえないという表情で驚いている。

 グレンがお見舞いに来てから、ちょうど一週間経っていた。
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