合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~
1章

あの夏の日(一)

 じりじりと焼け付くアスファルトの上を、やや下向きながら歩いていた。

 いつも通り図書館で時間を潰したとはいえ、まだ16時を回ったくらいの時間では、暑いという言葉以外何も出ては来ない。

 明日から始まる夏休みをどう乗り切るか。毎日、家と図書館の往復はさすがに考えてしまう。

「はぁ……」

 こういう時、帰宅部というのは考え物だ。

 受験まではあと一年あり、本格的に勉強を始めるには早く、かといって家には私の居場所はない。

 友達もろくにいない私には、長い休みは苦痛でしかない。

 汗が、頬を伝う。

 まるで涙のようなその汗を持っていたタオルで拭った。

 いつ変わるとも分からない、田舎の長い信号は、余計に気を滅入らせた。

「姉さーん。遅かったんだねぇ」

 ふいに後から声をかけられた。振り向かなくても、誰かは分かっている。

 同じ時間に帰らないようにしていたのに、今日は本当に運が悪い。

 滅入った気が、私の中で何倍にも膨れ上がるのを感じていた。
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