合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~
作り物の笑顔(七)
じりじりと焼け付くアスファルトの上を、やや下向きながら歩く瑞葉を見つける。
瑞葉が大体図書館で潰す時間を計算して、早めに部活を終わらせておいて正解だった。
汗が、頬を伝う。
まるで涙のようなその汗を持っていたタオルで拭った。
いつ変わるとも分からない、田舎の長い信号。
それをややイライラした様子で待つ瑞葉。本当になんてタイミングがいいのだろうと心の中で呟く。
「姉さーん。遅かったんだねぇ」
声をかけたのが誰か分かっている瑞葉は、振り向きもしない。
「ねー、無視しないでよぅ」
双子なだけあって、わたしたちは本当によく似ていた。
向かい合えばまるで合わせ鏡の前にいるかのように、声でさえ同じで親でも全く同じ格好、同じ髪型。
同じ喋り方をすれば見分けはつかない。
「別に無視しているわけじゃないけど」
「でもなんか冷たいし。なんか、怒ってるのー?」
「怒ってはないわ。ただ、姉さんと呼ぶのやめてって、言っているよね」
「なんだ、そんなこと。まだそんなこと言っているの? 戸籍上は瑞葉が長女なんだから別にいいじゃない」