合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~
作り物の笑顔(八)
「そういう問題じゃないでしょ」
「えー。何それ、じゃ、どーいう問題なのょ」
小馬鹿にしたようにわたしが笑うと、瑞葉は振り返って睨みつけてきた。
わたしは瑞葉のこの感情をむき出しにしたような瞳が好きだった。
自分が自分の思うような感情を出しているようでもあり、唯一ちゃんとわたしのことを見てくれている。
「ねぇ、夏休みはどーするの? また図書館?」
「別になんだっていいでしょ」
「何だって良くないよー、家族なんだし。そうそう、母さんが、今年は花火が見える旅館に泊まりたいって言っていたの知ってるぅ?」
「……」
「あれー、母さん、姉さんに言うのを忘れたのかなぁ。もう1ヶ月くらい前からずっと言っていたのに」
クスクスとわたしは笑えば、瑞葉は余計に不機嫌になる。
「そう……」
瑞葉が高校を卒業したら、自分に興味を示さない家族を捨てるつもりだということは知っている。
でも、そうしたら残されたわたしはどうなるのだろう。
あの家で、あの場所でたった一人で生きていく。
そんなこと、耐えられるのだろうか。
わたしを見てくれるこの瞳がない世界なんて。
「あ、青になったよー。早く渡っちゃお」