合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~

現実(五)

 着替えと化粧、そして髪のセットに小一時間費やした頃には、体力の戻っていない私はすでに疲れ果てていた。

 鏡に映る姿は確かに品があり、ハーフアップにした髪は軽く巻かれ、波打つ様は自分でも見惚れてしまう。

 ただこれが今の自分だと思うと、少し変な気分。そこだけは、どれだけ見ても、見慣れなしない。

「これで、微笑んで下されば、落ちない男などいませんからね」

「大袈裟よ、ルカは」

「そんなことありません。王都一の美人なのですから、しっかり背筋を伸ばして下さい、お嬢様」

「ん-。とにかく行ってくるわ」

「はい。いってらっしゃいませ、ソフィアお嬢様」

 ルカに太鼓判を押され、重い足取りのまま客間へ向かう。

 微笑みさえすれば、それが一番難しいのだけどね。
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