合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~

現実(八)

「おめでとう、ミア」

「お姉さま、ありがとうございます。わたしの婚約が先になってしまうなんて、なんだか申し訳ないですぅ」

 勝ち誇ったように、そして小馬鹿にしたようにクスリと笑う。

 胃がキリキリとして、露骨に嫌な顔をしそうな自分を押し留める。

「いいのよ。あなたとグレンがこの侯爵家を支えてくれれば、私はいくらでもしようがあるから」

 嫌味に嫌味で返す。これくらいならば、許されるだろう。

 グレンがミアとここを継いでくれれば、私は無理に結婚しなくても生きて行くことが出来る。

 自由気ままにとはいかなくても、もう誰も私に構わなくなるだろう。

 そうなったら、どこか田舎でのんびり畑でもして生活をしてもいいし、何かこの世界で出来る仕事を探すのも悪くはない。

 そう、私は別に何ともない。何ともないはずだ。そう自分に言い聞かせる。

「お父様、私はお邪魔のようですし、そろそろ退出してもよろしいでしょうか」

 父は私に何か言いたげな顔をしていたが、それを読み取ることは出来ない。

「……そうだな」

「そうね、ソフィアはまだケガも万全ではないのだから、そうしなさい」

「ありがとうございます」

 母の助け舟にほっとしながら、一礼してそそくさと息苦しい空間から逃げ出した。
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