合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~
5章

前進(一)


 あれからずっと考えていた割には、今日はよく眠れたと思う。

 昨日は部屋に戻ってから、夕ご飯もそのまま部屋に用意してもらった。

 どの使用人たちも一様に心配そうな顔をしていたが、なんとなく一人になりたかったのだ。

 でもそれも、もうおしまい。変わると決めたからには、早い方がいいに決まっている。

 まだ日も登りきる前の薄暗い部屋にランプを灯した。

 本来ならば使用人がやってくれるのだが、まだ起こすには少し早い。

 それにマッチの使い方も分かる私には、何の問題もなかった。

 薄い羽織を掛け、そのまま机に向かう。ランプを机に置くと、ゆらゆらとした光がその周りを照らしていた。

「とりあえず」

 机から紙とペンを取り出す。

 インクを付けて書くペンは、ボールペンなどに比べるととても書きにくい。

 しかも消すものがないから、失敗すれば書き直しという悲惨さだ。

「よし」

 気合をいれてから、ペンを進めていく。

 まずはお世話になった学園の先生たちに書く手紙からだ。

 当たり障りのない挨拶から、お世話になった感謝、そして何か面白いことがあれば教えてほしいと書き、最後にまたお会いしましょうとしめる。
 
 そう遠くないうちに、私はここを出ていかなければならない。

 父は元々忙しく、ほぼ家に帰らない人なので問題はないが、母は領地にあるカントリーハウスへ行くことになるだろう。

 領地はここから馬車で半日ほどかかる、海辺の町だ。

 船が着く港があり、そこそこ栄えてはいる。栄えている割に、領地面積はそれほど広くはない
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