合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~

日常(二)

 初夏のリンゴが約230円。若干高い気もするが、硬貨の価値としては、やはり想像していた通りだ。

「あら、ほんと。このリンゴとっても美味しそう。こんな美味しそうなリンゴが時季外れでも手に入るなんてさすがねー。ねぇ、このリンゴ10個買うからおまけしてくれるかしら?」

 お金の計算をしながら考え込む私を横目に、すかさず母が値切り交渉に入っていた。

「もう、ホントのせるのがうまいねー、奥さん。じゃ、今日だけ2個おまけしておくよ」

「すごーい、ありがとう。食べてみて美味しかったら、今度はこの倍買いに来るわ」

 満面の笑みを浮かべる母を見ながら、私は持っていたお金で支払いをする。

 リンゴ12個で、銅板20枚だから、銀貨2枚か。

「なんか奥様、とても手慣れていらっしゃいますね」

「ホントね、私一瞬近所のおばちゃんを想像してしまったわ」

「近所のおばちゃんって、お嬢様何なのですか?」

 いけない、あまりの母のここでの適応ぶりに、前の世界のことが口をついてしまった。

「買い物になれた庶民のおばちゃんってことよ」

「確かに、それは似ていますね」

 コソコソと話す私とルカの声は母には聞こえてはいないようだ。

 母はリンゴ以外の果物にも興味津々で眺めている。

 この店ではたくさん買うと、荷物はそのままお店の人が馬車まで運んでくれるサービスらしい。

 侯爵家の家紋の付いた馬車を見た彼がどう思うのか、やや心配ではあるものの、私たちは次の店に向かうことにした。
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