合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~

婚約(二)


 それにしても、グレンが紹介したい人がまさかキース殿下だったなんて。

 そう考えると、このドレスの色が殿下の瞳の色に似ている辺りからして、あまりいい予感はしない。

「全く、お前はいつもそうだな。可愛げがない」

「あなたこそ、男に可愛げなんて求めてどうするのですか」

「ソフィア嬢、ここは執務室になる。入ってくれ」

 殿下に促され、広間を抜けた先にある1つの部屋へと通された。

 赤い扉を開けると、中は私の部屋の2倍くらいの広さがある。

 書類が山積みにされた執務用の机、来客用の机とソファー、奥には簡易用だろうか、ベッドまで置かれていた。

 あまり不躾にならないように、見渡してから入室する。

 手慣れたようにグレンがソファーに腰掛け、手招きした。

 グレンの隣に座るのもなんだかおかしい気がして、対面に腰掛ける。

 すると奥で上着を脱いできた殿下が、私の隣に座った。

「あの、殿下。すみません、すぐ移動します」

「移動? どこに行ってしまうんだい?」

 隣に座り、私の手を掴む。なぜそこで手を掴むの。

 今までこんな扱いをされたことがないので、免疫がなさすぎるのだ。

「ほらほら、からかうのはそれぐらいにしておいて下さいよ。ソフィアは仮にも僕の義姉になる方ですからね」

「別に口説くのに、いちいち義弟の許可はいらないだろ」

「からかう……」
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