合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~

あの夏の日(六)

 ドスーンという大きな音が耳をつんざく。

 目の前が一瞬真っ暗になり、濡れたアスファルトに接している背中が冷たい。

 その逆に抱き抱える瑞希は温かかったが、ぴくりとも動かない。

 ぼんやりとする意識が、その冷たい地面に溶け込んで行くようだった。

 瑞希を助けることが出来たのか、助けられなかったのか。

 今の私にはそれすら確認することは出来ない。体は痛いという感覚を通り越し、もう何も分からないのだから。

「……なんで……」

 そう疑問を投げかけた声が自分の物だったのか、瑞希の物だったのかそれすら分からない。

 ただなぜ助けたのか。そんなことは私の中ではわかりきっていた。

 でもそれを口にすることはない。

 そして全てが、暗闇の中に飲まれていった。
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