合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~
父娘(二)
「くくくくく、残念。でも、叫び声すら可愛らしいなソフィアは」
「殿下、娘で遊ぶのはやめていただきたい」
本当に、心の底から私もやめて欲しい。
こんなの、心臓がいくつあっても足りない。
「いや。遊ぶ気はないさ。侯爵、ソフィア嬢に求婚することの許可をいただきたい。追って、書状にはまとめよう」
「……」
先ほどより、更に父の目つきが悪い。
私の不敬罪など、可愛いものだと思えてしまう。
「殿下の今のお立場は理解しているつもりです。しかし親としては、何とも言い難い。娘の意思を尊重するとしか、わたしには言いようがありません」
「要は、ソフィア嬢次第ということか」
「とにかく今日は遅いので、これにて失礼させていただきます。ソフィア」
父はそう言って、私に外套を羽織らせる。
そう言えば、この姿の私に言い寄ってくる輩は覚えておくようにとのことだったけど、王弟殿下でもその中に入るのだろうか。
「では、ソフィア嬢、また」
「殿下、グレン様、失礼させていただきます」
きちんと礼をすると、父と共に部屋を出た。
広間は先ほどまでいた人混みが嘘のように、まばらだ。
あれから思ったより時間が経っていたらしい。
母とミアの姿が見えないところを見ると、二人もすでに先に帰ったのだろう。