合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~
父娘(三)
外に出ると、夜風は思っていた以上に冷たい。
外套がなければ、確かに風邪を引いてしまいそうだ。
急いで父と馬車に乗ると、馬車はゆっくりとした速度で夜道を進み始める。
「ソフィア、いつから殿下とは知り合っていたんだ」
沈黙を先に破ったのは、父だった。
馬車の椅子に深く腰掛け、やや困ったような顔をしている。
「いつと言われても、この前カフェで一度お会いしただけです。今日はグレン様が私と殿下を引き合わせたいと言われて」
「で、今日婚約を申し込まれたと」
「はい……」
「そうか」
「お父様、一つお聞きしてもよろしいですか?」
「ああ、なんだ?」
「先ほど、お父様は殿下のお立場をとおっしゃられましたが、あれは王族としてのお立場ということですか?」
「……」
父は考えるように、片手で額を押さえる。
聞いてはいけない質問だったのだろうか。
「ああ、いや……そうだな……。王族としてという意味ではないんだよ」
肩を落とし、小さくなる私を見た父が慌てて答える。