合わせ鏡の呪縛~転生して双子というカテゴリーから脱出したので、今度こそ幸せを目指します~

氷の美姫(三)


「おいしい」

「だろ」

 私が気にすることなく食べている様がよほどうれしいのか、キースは今まで以上に上機嫌だ。

「グレンたちが行くような店じゃなくてすまない。俺はこういう方が本当は好きなんだ。だから一度、ソフィアにも食べてもらいたかったんだ」

「私もかしこまった店より、こういう方のが手軽ですし、何も考えなくてもいいので好きですよ」

「氷の美姫の意外な一面を俺だけが知っているというのは、悪くないもんだな」

「前から聞こうと思っていたんですが、氷の美姫って何なのですか?」

 キースが何度か繰り返している、私の二つ名。

 私が知っているものは、氷の姫君という私が笑わないことを揶揄されたものだ。

 それなのに、いつの間にそんな訳の分からないものにすり替わっているなんて。

「前からいろんな貴族が噂していた君の二つ名だよ。氷のように冷たく見えて、その実優しく、孤高で美しいという」

「いえいえ、私が知っているのはただの氷の姫君でしたよ。笑わないし、誰に対しても冷たいっていう」

 なんとなく似ているようで、少し違う二つ名。

 捉える人によって印象が違うとか、そんな感じのものなのかな。でも、それにしては……。
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