廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
最終章
1、微かな希望

「無駄話は終わりだ。さっさと引き上げるぞ。せっかく大本命がのこのこ自分からやって来たのだ。この好機を逃すな」

老人が目配せをすると、男たちは素早くローリーと私の手を掴む。
そして、叫び声をあげようとする私たちの口に何重にも猿轡をかませてから、キツく手足を縛った。
ローリーは体をぶんぶんと振り抵抗を試みたが、刃物が私の首もとに当てられると、青い顔をして黙りこんだ。刃物を持った、大きくて屈強な男たちに力では敵わない。
ローリーと私は簡単に担がれて馬車の中に放り込まれてしまった。
目を凝らすと、薄暗く湿っぽい馬車の中には大きな樽が何台も乗っている。
その表書きには「塩」や「砂糖」「香辛料」の文字。
しかし中からは、変な鳴き声やガリガリと引っ掻く音が聞こえていた。

「さてと。詰め込み作業をしないとな」

大柄な男は馬車に乗り込み、奥にある樽の蓋を開けた。
それから、中に入っていた麻製の大袋を取り出し、次に謎の木の板も取り出す。
いったいなにをする気だろう。
そう思い凝視していると、男は暴れるローリーの体を縄でグルグル巻きにし、完全に動きを封じた。
そののち、樽の中に押し込めて、上から木の蓋をし、大袋を詰め直したのだ。
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