花笑ふ、消え惑ふ


────わたしが安心して寝られるように。


いま、この人はそう言ったの……?



聞き間違いかと思ったけど、どうやらそういうわけでもないらしい。


土方は布団を抱えたまま固まっているわたしを煩わしそうに見やった。




「自分のぶんは自分で敷け。俺のぶんは俺で敷く。ここの掃除も片付けもしなくていい。夜はてめぇの好きに過ごせ」


話は以上だとでも言うように、土方は流に背を向ける。


そんな背中に、流は思わず声をかけていた。




「ここは、わたしの安心できる場所なんですか」

「知らねーよ。それはてめぇが決めることだろ」




────いまにも殺されそうだったわたしを助けてくれた。


だけど誰よりも冷たい目を向けられて、突き放すようなことも言われて。



でも────……こうして、“居場所”をつくってくれる。




胸に抱きかかえた布団をぎゅっと抱きしめて。


すこし埃っぽいけれどあたたかいそれに、どうしてか涙が出そうになった。




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