オトメは温和に愛されたい
「――お前の部屋、入っても()()()()()なのか?」

 私を抱いたまま、自分の方の部屋のドアに鍵をさした温和(はるまさ)に、そっちはうちじゃないと告げたら、そう問われてドキッとした。
 入っても平気なのか?じゃなくて平気な()()なのか?と聞かれたことに含みを感じる。

 そういえば、このところ梅雨らしくお天気がはっきりしなくて、洗濯物がこれでもかってくらい部屋干ししてあるんだったよ。当然、その……下着類もババーン!と無造作に干しまくってあるわけで。
 もともと枚数を持っていなかったところに、乾きの悪さが災いして、今日は日頃登板しないパンダちゃんを引っ張り出す羽目になったんでした……。
 よりによってそれを温和(はるまさ)に見られたんだった!と思い出した私は、にわかに顔が火照ってしてしまう。

「あ、あのっ、平気じゃ……ありません……でしたっ」
 でも、そんなわざわざハル(にい)のところにお邪魔しなくても、うちのドア前に下ろしてくれたら、部屋の中に入るぐらい一人で大丈夫よ?と付け加えたら、「お前、絶対消毒とかしなさそうだから却下」と言われてしまった。
 しょ、消毒……。
 というより……救急箱自体、用意してません、って言ったら呆れられちゃうかしら。

「でも……ほら、シャワーとかで傷口きれいに流せば……」
「痛いとか言って丁寧にやらねぇだろ?」
 お見通しだと言わんばかりのお言葉に、私は二の句が告げなくて黙り込んでしまう。

「おばさんたちから頼まれてんだよ。お前のこと」
 でなきゃ、こんな面倒なこと誰が……とぶつくさ言いながら、温和(はるまさ)は何でもないことのように私を彼の部屋に連れ込んだ。
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