私は結局、外からここに運ばれてきた時と同じようにお姫様抱っこをされて数歩先の脱衣所マットの上に下ろされた。
 数歩、とは言え今回は温和(はるまさ)が半裸だったので、最初の時の比じゃないくらい緊張してしまった。
 バスタオルに(くる)まっててよかった!と心底思ったのはここだけの話。
「立つのは平気か?」
 床に降ろされる際、手を離しながらそう聞かれて、私は子供の頃にタイムスリップしたみたいな気持ちになる。

 この優しい感じ。昔のハル(にい)だ……。

 膝を曲げ伸ばししなければ平気そうなので「大丈夫」と答えたら、そのまま別のタオルを頭に乗せられてガシガシと拭かれて――。
 力強い動きに翻弄(ほんろう)されて、よろめいた拍子に温和(はるまさ)の剥き出しの胸元に思わず手をついたら、途端物凄く怖い顔で睨まれた。
「――自分で拭きながら待ってろっ」
 ばかりか、すぐさま突き放すようにそう言われて、彼は大股で脱衣所を出て行ってしまう。

 わー、今のってやっぱり怒らせた……よね?
 私だって不可抗力! 好きで温和(はるまさ)の身体に触れちゃったわけじゃないっ。むしろ滅茶苦茶恥ずかしかったのに、そこは考慮してくれないとか、酷い!
 言い訳の機会くらいくれてもいいのにぃー!
 そんなことを心の中で叫びながらも、「でも、温和(はるまさ)、何をしに行ったのかな?」とか「待ってろ、って言われても……」とか、次々に別のことも思ってしまう。