オトメは温和に愛されたい
「待て」ができないみたいです
 当たり前だけど、結婚指輪なんて買いに行きました、すぐに持ち帰れますってものではななくて……。店頭で気に入ったのを選んでから注文になった。
 納期は4週間ほどかかるらしい。

 温和(はるまさ)は「かかりすぎだろ」ってプンスカしていたけれど、私はそのぐらいはかかるでしょ?って思ったの。

 指輪は、裏に文字を刻印してれるみたいで。

「裏、どうなさいますか?」
 店員さんに聞かれて、こういうメッセージがよく入れられていますよ、という例文を見せられた。

 その中から、各々相手に送りたい言葉はこれというのを、お互いには内緒で選んで。
 何を刻んだかは出来上がってからのお楽しみにしようってことになったの。

 店員さんもそういうことでしたら、って引換書の方にはメッセージが載らないように配慮してくださって。
「すみません、わがまま言ってしまって」
 そう言ったら、「幸せのお手伝いをさせていただけるの、光栄です」ってにっこり微笑まれた。
 もしかしたら私たちみたいなカップル、他にもいたりするのかもしれない。

 選んだリングのデザインは、温和(はるまさ)がどうしても表側にダイヤが入ってるのにしろと聞かなくて……凄く迷ってハーフエタニティリングの、レール留めのものにした。
 それなら爪も出ていないから子供たちに影響が少ないかなって思って。
 温和(はるまさ)は、それに合わせて作られた、メンズ用のプラチナの地金のみのシンプルなデザインのリング。

温和(はるまさ)はそれでいいの?」
 って聞いたら、「俺のはお前のおまけみたいなもんだからデザインにこだわりはねぇよ」って言われた。
 それより重要なのは、
「俺がお前と(つい)になったリングをつけるってことだろ?」
 らしい。
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