オトメは温和に愛されたい
甘いお誘い
鳥飼(とりかい)先生、お疲れ様です。……足の調子はどんなですか?」

 時計が十七時半を回った頃。
 児童らに配る課題プリントをせっせと手直ししていたら、不意にパソコン画面に人影がさして、すぐ横から声をかけられた。

 うちの学校の勤務時間は七時四〇分から十六時四〇分。なので現段階で既に残業している感じの時間帯なんだけど、大抵いつも十八時前後までみんな残ってしまっているから、そういう感覚にならないのがよくないな、とか思っていたりする。

 隣の席の温和(はるまさ)は、さっき逢地(おおち)先生に呼ばれて出て行っていて席空き中だ。
 養護教諭が、温和(はるまさ)に何の用だろう?と思いながらソワソワした気持ちで見送ったのは内緒。
 そんなこと言ったら、きっと温和(はるまさ)に「仕事中に馬鹿か」って怒られちゃう。

「お陰さまで随分楽になりました。明日には普通に歩けるようになってるかな?って思います」

 朝は割と腫れていた膝も、一日あまり歩かないようにして過ごしたのが功を奏したのか、随分マシになっていた。
 この分なら一晩寝たら歩くのには支障なくなるかな?
 そんな風に思いながら、私のデスク横に立った鶴見(つるみ)先生ににっこり笑う。

「それは良かったです。あの、それで……鳥飼先生、お仕事、あとどのぐらいかかりそうですか?」

 いきなり話題を変えてきた鶴見先生に、私は一瞬キョトンとする。
< 50 / 433 >

この作品をシェア

pagetop