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「幸生くん、むこうは人も車もいっぱいだ。ママとしっかり手を繋いで歩くんだぞ? 知らない人に付いて行っちゃだめだぞ?」

「はーい……」


ローカル線の駅まで送ってくれた所長に返事をしたが、幸生はソワソワキョロキョロ落ち着きがない。

この二週間、会いたくても会えなかったパパのところへ行くのが待ちきれないのだ。
そんな幸生の様子に、所長は「すっかりパパっ子だなぁ」と目を細めて笑う。

所長がまだまだ現役で働ける、とのお墨付きをもらって町に戻り、留守を預かっていた尽がN市へ帰って二週間。

幸生は落ち込むこともなく、ワガママを言うこともなく、規則正しく、健康的で、おりこうさんな毎日を送っていた。

元気よく保育園へ通い、まだ起きている時間に尽が電話を架けてきたときには、保育園での出来事などを報告。
電話で話せない時は、録音した尽の声があおむしの絵本を読むのを聞き、夜更かしすることも、ぐずることもなく、寝てくれた。

尽がこの町を離れた先々週の日曜日。
幸生は、周囲の予想を大きく裏切り、ニコニコ笑顔で尽を見送った。
あんまりにもあっさりしていたので、わたしも所長も心配になったほどだ。

前日の夜、尽が幸生と一緒にお風呂に入った時に、何か言ったのだろうと見当はついていた。
が、幸生に何を話したのか訊いても「ママは、おとこどーしじゃないから、ダメ」と教えてもらえずじまい。

しかし、昨日届いた分厚い封筒が、ついにタネあかしをしてくれた。