逆プロポーズした恋の顛末



「すっごくなりたいものがある時って、がむしゃらになってるし、それが悪いこととは思わないけれど……視野が狭くなっているのよねぇ。それになれないなら、もう全部がダメ! みたいに思っちゃって。視点を変えれば、別の可能性が開けることもあるのに」


余計なイメージや思い込みを剥ぎ取ってしまえば、物事はとてもシンプルに見える。
どうして気づかなかったのかと笑いだしたくなるほど、いろんな可能性が現れる。


「クールな天才外科医だけが、名医と言われるわけじゃないでしょ?」

「外科医になりたいわけじゃねぇよ」

「そうねぇ。尽は、そういう感じじゃないものね。どっちかというと……」


わたしを期待のまなざしで見つめる尽の表情が、さっきよりもずっと和らいでいるのを確かめて、くすりと笑った。


「小児科医とか、似合いそう」

「は?」

「わかりやすいから、子どもたちに好かれそう」

「……どういう意味だよ」

「嘘が吐けないってこと」


図星だったのだろう。
反論は、されなかった。
その代わり、わたしが手にしていたブリトーに噛みつかれた。

今度はきちんと半分ずつ分け合い、空腹を満たしたところで、ベッドへ舞い戻る。
もう一度、お互いの反応を確かめ合うようにゆっくり抱き合って、穏やかな気分で眠りに落ちた。

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