そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜
 そんなあれやこれやの警戒心が思いっきり顔に出てしまっていたんだと思う。

「そんなに警戒しなくても。――俺は御神本(みきもと)頼綱(よりつな)。……縁あってキミのお母さんのことを知っている」

 お母さんと知り合いだと言われてもピンとこない。

 だって四十路(よそじ)半ばを過ぎたお母さんの知り合いにしては、随分と若く見えるんだもの。
 胡散臭いこと極まりないじゃない。

「ああ、知り合いと言っても友達というわけじゃないよ? キミのお母さんが20代の頃、うちの父親がやっている産婦人科に勤めていらしてね、その絡みだ」

 言われて、私は少し肩の力を抜いた。

 お母さんは看護師だから。
 病院に勤めていたと言われたら信じるしかない気がしたの。

お母(むらかげ)さんが倒れられたとお聞きして、遅ればせながら先日入院先へお見舞いに行かせて頂いたんだ。――それで……キミのことを頼まれてね。俺も、むかし彼女に可愛がってもらったよしみで断れなかったんだよ」

 そう言ってふっと笑ったその男性に、私は思わず見惚れてしまう。

 こうして見ると、とても整った顔をした人だ。
 オールバックにセットされた髪の毛の、ところどころが後れ毛のように落ちてきているのでさえも色気に感じられてしまうような。
< 8 / 632 >

この作品をシェア

pagetop