ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
君も息子も手放したくない
【三、君も息子も手放したくない】


 どこをどう見ても蒼斗は俺にそっくりだ。名前だって俺の〝蒼〟という字が使われている。

 みちるが病院の受け付けを済ませているあいだに、母子手帳に記入されていた誕生日から逆算して、妊娠した時期が俺と別れる直前だとわかり一気に脈拍数が増加した。

 海外研修の話が届いたとき、俺の頭には断る選択はなかった。そして同時に浮かんだ考えが、アメリカにみちるについてきてもらいたいということ。

 彼女には彼女の生活があるし断られる覚悟はしていたが、遠距離恋愛は受け入れてくれるだろうとどこかで甘えていたのは事実。

 だからホテルのスイートルームを取っていたし、帰国後すぐに結婚できるようにプロポーズをするので、記憶に残る一夜になると考えて疑わなかった。

 彼女の真面目でひたむきな姿に惹かれ、優しさの塊のような人柄が好きなのに、俺はなにもわかっていなかった。

 そんな彼女だからこそ、別れという選択をする可能性があることに。
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