【2/4 番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜
5、彼の婚約者

「いきなり放置はありえないわ。許すまじ、久遠臣海(くおんおみ)!」

 そう言ってミヤちゃんがグラスの赤ワインをグイッとあおる。

 水曜日の午後6時。

 今日は私が早朝勤務の国内線乗務でミヤちゃんがオフだったため、2人で待ち合わせて新宿の肉バルに来ていた。

 週のど真ん中だからか店内は比較的客が少なく、のんびりとした空気が流れている。


「ちょっ、ちょっとミヤちゃん、声のボリュームを下げて!」

 私とミヤちゃんが座るテーブルの隣には客がいないため、お喋りしていても迷惑にはならないだろうが、大声で個人名を言うのはさすがにマズい。

 なにせこの店は『KUONホテル新宿』の3軒(となり)にあるビルの1階。
 しかもここから徒歩数分の場所にはKUONグループの本社ビルもあるのだ。

 CEOである臣海さんを知る人間が店内にいないとも限らない。

< 124 / 326 >

この作品をシェア

pagetop