【2/4 番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜
5、彼の婚約者
「いきなり放置はありえないわ。許すまじ、久遠臣海!」
そう言ってミヤちゃんがグラスの赤ワインをグイッとあおる。
水曜日の午後6時。
今日は私が早朝勤務の国内線乗務でミヤちゃんがオフだったため、2人で待ち合わせて新宿の肉バルに来ていた。
週のど真ん中だからか店内は比較的客が少なく、のんびりとした空気が流れている。
「ちょっ、ちょっとミヤちゃん、声のボリュームを下げて!」
私とミヤちゃんが座るテーブルの隣には客がいないため、お喋りしていても迷惑にはならないだろうが、大声で個人名を言うのはさすがにマズい。
なにせこの店は『KUONホテル新宿』の3軒隣にあるビルの1階。
しかもここから徒歩数分の場所にはKUONグループの本社ビルもあるのだ。
CEOである臣海さんを知る人間が店内にいないとも限らない。