【2/4 番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜
2、寝るか付き合うか

『KUONホテル・ニューヨーク』は、今や世界中に展開しているKUONホテルチェーンの記念すべき海外進出1号店だ。

 1975年の開業から今日(こんにち)まで、18階建ての瀟洒(しょうしゃ)な建物の改装を繰り返しつつ、ニューヨーク唯一の日系ホテルとしてマンハッタンの中心に君臨している。

 その格式高いホテルの17階の廊下で、さっきから私は立ち尽くしたままだ。


 ――どうしよう……。

 私を含め乗務を終えたクルーがチェックインしたのは同じマンハッタンにある別のホテルだが、皆で食事に行こうという誘いを断って、1人だけ抜け出してきた。

 久遠臣海(くおんおみ)に会うために。


 空港からホテルまで移動するバスの車内、スマホで熱心にKUONグループの情報を調べていた私を横からミヤちゃんが不審げに見てきたけれど、今日ここに来ることは言えなかった。

 2年前、優也さんにこっぴどくフラれて帰国した私を慰め、一緒に怒ってくれたミヤちゃんだけど、さすがにあの夜に起こったことまでは伝えていない。
 だって酔ったはずみで……なんて恥ずかし過ぎる。


 そういうわけで、『今日は疲れたから部屋で休むね』なんてベタな言い訳をしてここに来た私は、それでも目の前のドアをノック出来ずに躊躇しているのだ。

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