【2/4 番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜
3、仮の恋人

『クリスマスイヴにニューヨークまで会いに来てフラれるとか、信じられます?』

『私、1月1日が誕生日なんです。誕生日のお祝いがいつもお節料理だって嘆いたら、だったら僕がディナーに連れてってあげるよ……って。ディナーどころか恋人のいない新年を迎えちゃいましたよ!』

『お弁当がウザイって、オカンって……オカンで悪いか〜!』


 ――あっ、これは夢だ。

 白いもやがかかったようなフワフワした思考の中で、それでもこれが夢の中だということだけはわかっている。
 いや違う、夢だけど夢じゃない。だってこれは現実に起こったことなのだから。

 これはあの日……優也さんにフラれたニューヨークの夜の出来事だ。

 そこでほんのり思い出してきた。
 あの日、酔ってぐでんぐでんになった私は泣きながら臣海さんにしがみつき、愚痴りまくっていた。


『忘れたいのか?』
『忘れたい』

『抱いてやろうか』
『抱いてもらえば忘れられる?』
『忘れさせてやるよ。最高に気持ちいい方法で、クズ男の記憶を上書きしてやる』

 そしてポロポロと涙を流した私を、彼は言葉と身体の両方で抱きしめてくれたのだ。
 癒すように、(いたわ)るように、そして時に激しく……。


『あっ、やだっ、そんなところっ』
『恥ずかしがらなくていい。あんたはとても綺麗だ、ここも……』
『んっ……あっ、ああっ!』




「――もうダメっ、変になっちゃう!」

 意識が急浮上してハッと目を見開くと、白くて高い天井が見えた。
 首をキョロキョロさせて周囲を見渡せば、カーテンの開かれた大きな窓からは眩しい光が差し込み、室内を明るく照らしている。

 そうか、ここはホテルの臣海さんの部屋で、私は昨夜、彼に子守唄を歌いながら知らない間に寝てしまったのか。

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