一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
第1話 一瞬の出会い
 
 ――私は『結婚前提』のお見合いをする。

 ロビーから見える噴水に雨粒が落ち、丸い波紋を描いている。
 大きな窓ガラスには水滴がはりつき、ホテルのロビーを行き交う人と憂鬱そうな私の顔が映っていた。

 ――雨が降る中のお見合いって、どうなのかな。

 お見合いする前から、私の結婚は父の命令によって決まっていた。 
 
「結婚したくない……」

 私の小さく呟いた声は、ざわめきにかき消され、誰の耳にも届かない。
 お見合い相手が、どんな人なのか知らないけれど、結婚するには最悪のタイミングだった。
 この春、私は服飾の専門学校を卒業し、憧れだったデザイナーとして働き出したばかり。
 デザイン事務所で、アルバイトをしていた私は正社員として採用され、ようやく本格的に働けるようなった。

 ――私がデザインした服が商品になる!

 そんなワクワクした気持ちは、働いてたった二ヶ月で、父によって消された。
 私の家は繊維会社を営み、祖父の代には、大きな工場をいくつも所有していたけれど、時代の流れから経営を徐々に縮小し、今は一つだけ。
 そのたった一つだけ残った工場も閉鎖の危機に晒されている。
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