一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 ブーケトスで女性に間違えられて、投げられてしまうのも納得できる。
 
 ――あの人を思い浮かべて、イメージすると、なにか描けそうな気がする。

 でも、しっかりとした顔が思い出せなかった。
 目に焼き付ける前に、別れたことが本当に悔やまれる。
 でも、恋に落ちる前に、私は自分の心にブレーキをかけた。
 結婚相手が決まったのだから、私は誰にも恋をしてはいけない。

「私の結婚相手はINUIグループの御曹司様……」

 乾井と聞いて、私は名前を聞いたことがあると思った。
 安さを追求し、品質は二の次だと評判のINUIグループ。
 ワンシーズン限りの服を作るファストファッションを中心に、国内外で展開するアパレル界上位企業の一つ。
 安く手頃に、流行の服を着れるから、それが悪いとは言わないけれど、クレーム処理が雑だという点が気になる。

「でも、大手なのよね。一度、取引が入れば、しばらく会社は安泰っていうくらいの大口だし」

 だから、INUIグループ専務となれば、父と継母の態度が低姿勢なのも納得だ。
 乾井啓雅さんの価値観が、今のINUIグループと同じものであるなら、私の考え方とは異なる。
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