今日、片倉がマンションを早く出たのは、浅緋の顔を見るのが怖かったからだ。
 あんなに人見知りの浅緋が、男性と同席している、と聞いただけで、腹の奥がぐわっと熱くなるような嫉妬心が芽生えた。

 片倉はそんな自分にため息をつく。
 それほどまでに激しい感情が、自分にあったのかと思うと驚いたくらいだ。

 その連絡をくれた槙野に、即座に動いてくれと頼んだ。

 それだって、早くしろと怒鳴りつけそうな気持ちを抑えながら伝えたのだ。

『犬じゃない』だのなんだのと槙野がくだらないことを言うから、嫉妬でおかしくなりそうだという本音がつい口から漏れてしまった。

 そうして、そのまま気づいたら、普段なら乗らない車の鍵を手にしていたのだ。
 渡辺に頼んで車を回してもらうような、気持ちの余裕は一切なかった。

 この2週間、片倉は浅緋と過ごして、とても幸せだったのだ。

 どうしても忙しくて、夜は時間が取れないこともあったけれど、朝ならば絶対に顔を合わせられるのではないかと思ったら、それは間違いがなかった。

 最初のうちは卵焼きをフライパンから皿に移すだけでも緊張していた浅緋は本当に可愛くて、緊張していると分かっているのに、ついじいっと見つめてしまった。