政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 その光景が幸せすぎて。

 焦がれていた浅緋が目の前で動いて、片倉に照れたように笑って、嬉しいと言ったりすごいと感嘆したりする。

 人見知りだと言っていたけれど、片倉には慣れようとしてくれているのも分かったし、いやむしろそれが分かるからこそ、愛おしい気持ちが大きくなったことも間違いはない。

 一緒に生活なんてしていたら、そのうち飽きるものではないかと思ったけれど、そうではなかった。
 どれだけでも、その表情を見たいと思うし、一緒に過ごしたいと思う。

 今までそんな気持ちにならなかったのは、そういう女性に出会えなかったからなんだということが、片倉にははっきりと分かった。

 大事にしたい。心からそう思える人なのだ。

 そして、自分だけのものにしたい。
 泣くのも、笑うのも、自分だけのものにしたいくらいに。

 けれど、そんなことをしたらきっと嫌われてしまうから。嫌われるなんてことは耐えられない。

 浅緋が何かをほしいと言ってくれたらなんでも買ってあげるのに、なのに浅緋はそんなことは言わない人なのだ。
 自分からは何もねだらず、あるものに感謝することのできる人。

 そんな浅緋にあんな嫉妬に狂ったような顔は見せたくなかった。
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