政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
13.二人の休日
「桜華会?」
「はい。毎年準備は今の時期にするんです」

 それは園村家のあの広い庭を解放して行う、大規模な『お花見』のようなものなのだと言う。
 桜の時期に園村が気のおけない友人を招いて、飲食をする会だった。
 浅緋はそのように片倉に説明したのだ。

 園村家の庭には、あの一番大きな桜の木の他にも小振りな桜がたくさん植えてある。
 もちろん桜だけではない庭は、季節ごとに目を楽しませてくれると聞いたことはあるけれど。

「今まで父が主催していたので、今年はやめようかと話していたんです」
「どんな方がみえるの?」

「そうですね、主に父の友人です。今年はやらないのか? とお問合せいただいて、どうしましょうかって母と言っているのですけれど」

「やるなら手伝うよ」
「そうですねぇ……」

 悩まし気に首を傾げる浅緋の頬を、片倉が指で撫でる。

 その浅緋がいるのは片倉の膝の上なのだ。

 先日、改めてお互いの想いを伝えあった2人は改めて婚約することを2人で決めた。
 表向きには何も変わらないけれど、2人の中ではそれは大きな進歩だ。
< 173 / 263 >

この作品をシェア

pagetop