政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
14.時期と判断
「つまり時期を外すと何事も難しい、ということだ」
「真顔で言うな、震える」

 最終決裁が必要な案件があると言ったら、書類を本社に持ってこいと槙野は言われて、目の前には真顔の片倉がいるのだ。

「僕は時期や判断を誤らない」
「おお、知ってるぞ」

 正直、先ほどから片倉が何を言いたいのかさっぱり分からない槙野なのだ。

 槙野が渡した書類も決裁箱に入れたまま、確認する気配がない。
 決裁して欲しいのだが。

「ゆるふわと何かあったのか?」
「ゆるふわ……? 浅緋のことか? お前そんな風に呼んでるのか?」

「じゃあ、浅緋ちゃんって呼んでいいのかよ」
「いや呼ぶな。それでいい。人前では苗字で呼べよ」
 (うざ……!)

 片倉は細かいところにもよく気がつくのは本当に利点だと思うのだが、こういう神経質なところが若干ある。

 槙野から見ると少し前まで、浅緋はなにやら悩んでいるように見えた。
それも大した話ではなくて『片倉が怒っているんじゃないか』とかそんなようなことだったと思う。
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