浅緋は出社してくるとまず、社長である槙野宛ての文書の振り分けから始める。

 社外社内問わず、会社の代表あてには一日で様々な文書が届く。
 槙野に言われているのは、親展以外は全部開封して至急と対応要と不要に分けて欲しいということだ。

 文書の振り分けの後はメールのチェックをする。
 メールも同じくで、その振り分けだけでもかなりの時間がかかってしまうのだ。

 ほとんどをパソコンからのメールで対応する槙野だが、ごく稀に、文書で返信することもあって、その際に宛先を書くのは浅緋の仕事だ。

 子供の頃から毛筆を習っていた浅緋の字はとても綺麗だと好評らしい。
 そんな風に仕事を進めていたら、社内がザワザワしだしたのを感じた。

──どうしたのかしら?
 ふと、顔を上げた時、会社の入口に槙野や他の役員を伴って現れた片倉の姿を見つけて、浅緋は動けなくなってしまった。

 え⁉︎慎也さん?
 どうして?

 朝、一緒に食事した時は何も言っていなかったはずだ。

 片倉は槙野から何か説明を受けているのかうんうん、と頷いている。