ピピピ……音を立てる目覚まし時計を、浅緋はベッドサイドに手を伸ばして止めた。

「ふぁ……」
 大きく伸びをする。

 ん?
 目が覚めるといつもとは違う部屋の光景に、浅緋は一気に目が覚めた。

──そうだったわ!

 昨日から婚約者である片倉の家に、一緒に住むことになったのだった。

 部屋を出ると、浅緋の部屋の隣のキッチンから香ばしい香りがしている。
 浅緋は慌てて、キッチンのドアを開けた。

「おはようございます!」
「浅緋さん、おはようございます」

 キッチンの朝の光がこぼれる中で、髪が少し濡れていてそれを首からかけたタオルで軽く拭いている片倉がいて、浅緋に向かって微笑んだ。

 朝から大きく浅緋の心臓が跳ねる。
 この方、とても心臓に悪いわ……。
「おはようございます……。ごめんなさい。遅くなってしまって」

「いいえ。むしろ、うるさくして起こしませんでしたか?」
「いえ」
 本当にいつも片倉がくれる言葉は浅緋を気遣って、優しいものばかりだ。