友人でもあり、上司でもある片倉に
「飲みに行こう。時間はあるか」
と言われた時、槙野は少し嫌な予感がした。

 こういう時の槙野の勘はたいがい当たる。

 その頃の槙野はちょうど1年半かかったプロジェクトを終わらせて、出向から帰ってきたところで、どこかでプロジェクトを拾ってくるか……というような心境だった。

 仕事は好きだ。
 しかも、自分が配属されることによって、最初は暗い雰囲気だった会社の中がどんどん明るくなるのを見ていたら、やりがいしかない。
 
 それはたまには嫌な顔をされることもあるけれど、大抵、槙野を目の上のたんこぶのように思うのは、腹に一物ある人物が多いのだと分かってから、自分の存在はあぶり出しにも役立っていると思えば、嫌われても、含み笑いできるというものだ。

 槙野は経営のプロのように言われているけれど、槙野自身はそうは思っていない。

 いいところを見て、いいところを伸ばす。
 悪いところは切る。
 それだけだ。

 槙野には別に損得勘定もなければ、義理も縛りもない。
 やらなければならないことはたった一つ。依頼を受けた会社の業績をあげることなのだから。