・LOVER—いつもあなたの腕の中—
8
「……そろそろ限界だった、ってことか」


 ニューヨークから帰国したばかりのリュウは、リビングで寛ぐ暇もなく。私からの尋問にあっている。
 ソファ前のローテーブルにはカップが二つ仲良く並んでいるものの、立ち上がっていた湯気もすっかり消えていた。


「リュウ? 何を言っているのか、私にはサッパリ分からないんだけど」


 おバカな私にも分かる様に説明してよ、とリュウの顔を覗き込むと。少し悲しげな眼で微笑み返されてしまった。

 副社長から意味深な言葉を残された私は、リュウの帰国を待ちきれず。声が聞きたくとも連絡せずに我慢しようと決めていた気持ちが揺らいでしまい、耐え切れずにリュウへ連絡を入れてしまったのだ。
 私からの連絡に、リュウは嬉しそうに電話に出てくれたが。その内容を告げた途端、当然のように反応が鈍くなった。

 帰国したら直接会って話そうと提案され。
追及することを延期されてしまった私は、リュウの帰国を待つ間ひたすら悶々とした日々を過ごしていたから。
 リュウから帰国したと連絡を受け、取るもの取り敢えずマンションへ直行してきた。
 そして、副社長からの伝言を伝え今に至っている、というところだ。
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