【完】溺愛体質の彼は私に好きと言わせてくれない

イベント

『好きと言うのは簡単だけど、人を好きになるって難しいことなんだよ』




私は先輩を好きになるのは簡単で、初めて会った時に一目惚れしてからずっと想い続けてきた。





告白する時は心臓が飛び出るんじゃないかってくらいドキドキしてた。





“好き”を言葉にする方が難しいと思う。先輩にとってそれは簡単なことらしい。





「榛名ちゃん行こうか」





そんなことを言った先輩が私を誘ってくれたからにはしっかりとアピールしていかないと…!





「昴先輩。手、繋いでいいですか?」





ちょっと大胆になりすぎ?いやいや、これくらいはしないとアピールとは言えない!




「いいよ」





あ…手は簡単に繋いでくれるんだ。なんだか簡単すぎて思っていたのと違う。





先輩は断ると思ってたし。





「俺の手に何かついてた?」






「ちが!あの、先輩の手って大きいなって」





咄嗟すぎて思わず先輩の手のことを言っちゃったけど、引いてないよね……?





依乃里が不安げに昴の方を見ると、キョトンとした顔で自身の手を見つめていた。





「そう?ふっ、榛名ちゃんの手は小さいね。可愛い」






それも言えるんだ……。“可愛い”だって恋をする子には特別な言葉なんですよ。





そんな言葉はスっと言ってくれるのに。





昴の考えていることは何度考えても分からない。






けど依乃里はそのことを考えるのは今はやめておくことにした。






これから行くイベントは依乃里が心から楽しみにしていたもの。






悩みより、楽しいことをするのが今は一番大事だと依乃里は考えた。
< 14 / 173 >

この作品をシェア

pagetop