名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
待てば海路の日和あり
 高級マンションのエントランスホールで部屋番号のパネル盤の前に立ち、緊張しながら部屋番号を入力した。
 最後に大きく深呼吸をして、呼び出しボタンを押した。すると、「開けたよ」と朝倉先生のイケボが聞こえ、エントランスの扉が開いた。

 コツコツと音のするピカピカの大理石の床を歩いていると、ココで転んだら大ケガだなと心配になってしまった。
 今日は美優が起きていて、自分で歩きたいと腕の中で暴れている。こんな大理石の床で頭でも打ったらと思うと絶対に下ろせない。見た目は綺麗でも子供にとって優しくないものがある。

 エレベーターの前につき開くのスイッチを美優に押させてあげるとピカッとスイッチが光りドアが開いた事で、満足げなドヤ顔を見せていた。
 独特の浮遊感を伴い、エレベーターが動きだし、その階数に着くと扉が開く。
 大きく目を開けてキョロキョロと様子を伺う美優。何にでも興味を示し自分でやりたがる美優は順調に成長している。産まれた時を思い起こすと子供の成長はアッという間だなと思った。

 部屋のインターフォンも美優に押させてあげる。
 ピンポーン。っと、鳴ったのに気を良くした美優が続けてピンポーン、ピンポーンと押してしまった。
 まるで、私が朝倉先生を急かしている様で、自分から誘うような事を言ってしまった手前、恥ずかしさ倍増。
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