すてられた想い人をなぐさめたら、逆に私がひろわれました!?
何でそんなに不機嫌なの?
 結局柳川(やながわ)はタクシーを止めてくれると、私を車内に押し込みながら「住所言えるか?」って聞いてきて。
 「大丈夫(らいじょぶ)よ」と運転手さんに行き先を告げる私を、ドアを押さえて覗き込んだまま、少し戸惑ったように見つめてきた。

「――鳴宮(なるみや)、住んでる部屋、何階?」

 ややして、どこか意を決したように聞かれて、「んー? 2(きゃい)だよ」って何の気無しに答えたら、「エレベーターは?」って続けられる。

 もぉ、柳川の世間知らずっ。
 2階建ての安アパートにそんなのあるわけないじゃないって可笑しくなった。

「や〜ん。そんな高級(こーきゅー)設備(せちゅび)あるわけにゃーい。えっちらおっちら歩いて上がりましゅよ、(わらし)は」

 お酒のおかげか、今度は何もかもが楽しく思えてきてヘラリと笑った私に、柳川が小さく舌打ちするのが聞こえた。

 え?
 何で怒るの?
 私が思いのほかオンボロなアパートに住んでたから?
 ん? ん? 意味分かんなぁーいっ!


 そう思ったのも束の間、柳川が何故かタクシーに乗り込んできて、「出してください」って言ったから、さすがに驚いて目がまん丸になる。

 だってだって。てっきりここで解散だと思っていたんだもん。
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