冷徹外科医と始める溺愛尽くしの政略結婚~不本意ながら、身代わりとして嫁ぎます~
明かされた真実 SIDE 一矢
 良吾に優を紹介してから十日ほど経った。今夜、あいつと会う予定でいる。

 あの日、寝支度を済ませた優が自室に入ったのを見届けてすぐに、良吾はなにをして彼女を泣かせたのかを電話で詳しく聞き出していた。

 優が、噂に聞く通りの振舞をしていれば、俺だってなにもあそこまであからさまに彼女を庇いはしないし、良吾を止めもしなかっただろう。
 だが、最初から彼女には違和感しかなった。伝え聞いた話と違う。それどころか、真逆のようだった。

 それを良吾にも伝えてあったはずなのに、あいつは少々やりすぎた。それが俺を思うがゆえの言動だとわかっていたが、このときばかりは責めずにはいられなかった。

 良吾も、優に対する違和感や俺の思いがわかったのだろう。最後は自身の非を認めて、潔く謝罪をした。もちろん彼には、俺のためにしてくれたのは伝わっていると感謝を伝えてある。


「一矢!」

 行きつけの居酒屋を覗けば、良吾はすでに席に着いていた。いつもなら仕事柄気安く酒を飲めない俺に気を遣うなと、先にはじめてもらっているところだが、今日は勝手が違ったようだ。良吾の目の前に置かれているのは、お通しとどう見てもウーロン茶のみ。それ以上の注文はまだのようだ。
 その不自然な様子に、なぜか胸のあたりがざわついてしまったのは気のせいだろうか。

「待たせたな」

 向かいの席に腰を下ろすと、やって来た店員にウーロン茶を頼んだ。

「一矢、いろいろとわかったぞ」

 焦りを取り繕うともしない良吾の姿に、彼らしくないと思いながら耳を傾ける。良吾はあれから、件のバーに出入りしていた知り合いなどから、優について話を聞いてくると言っていた。

「三橋の問題児は、三橋優じゃない」

「は?」

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