若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい

《3》


 豪華客船ハゴロモは、最初の寄港地であるホノルル港へ到着した。
 米国ハワイ州オワフ島の南岸に、州都ホノルルはある。ハワイ諸島の玄関口とも呼ばれているホノルルはかつてはハワイ王国の首都が置かれていたことでも有名だ。
 太平洋上の交通の要となる港や軍事基地だけでなく、市の中心部には高層ビルやコンドミニアムなどがそびえ立っており、アメリカ太平洋地域の経済をも担っている観光都市である。想像以上に近代的な建物が島内に並んでいる。
 新婚旅行などでハワイを訪れる日本人は多いが、マツリカは実は行ったことがなかったのだ。
 ロサンジェルスを出港してから約二週間。カレンダーはとっくに十一月に入っているが、ホノルルの気候は年間を通して摂氏三十度前後と安定している。さながら夏のような陽気と青い海原だ。

「お手をどうぞ」
「ありがとう」

 乗客に紛れて、マツリカとカナトも下船した。タラップを降りる際に優雅に手を差し出されて、マツリカは困惑しながらその手を重ねる。
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