若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
chapter,7 Naha → Tokyo

《1》


 豪華客船『羽衣 ーhagoromoー』で行くロサンジェルス発東京着72泊73日の旅も、残すところあとわずか。南太平洋クリスマスクルーズも最終寄港地、沖縄の那覇へと到達した。バリ島からハゴロモに戻ったマツリカはひとりで使用人控室で寝起きすることもせず、カナトとともにプライベートスイートルームのベッドで朝から夜まで一緒に過ごしている。その姿はさながら蜜月のよう。

「もう、日本に入ったんだ」
「バリ島以降、時間の経過がおかしい気がするんだけど」
「それだけ俺がマツリカをたっぷり愛していたってことか……」
「ばかっ」

 年越しを沖縄で迎えた後、ハゴロモは到着地となる東京に向かう。
 南太平洋と違い、冬の空気が漂う那覇は温暖でありながらも、熱帯の湿っぽさを感じない。
 あいにく泣き出しそうな空模様だが、カナトとマツリカは気にすることなくタラップで身体を寄せあっていた。

「年末年始は、どこで迎えたい?」
「カナトの腕のなかなら、どこでもいい」
「――そういうことを、言うか……ッ」
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