彼と私のお伽噺
御曹司様の唯一

 目を覚ますと、部屋全体が明るい朝の光に包まれていた。

 夜中ずっと考えごとをして寝付けなかったが、いつのまにかうとうと眠っていたらしい。

 今、何時……。


「ようやくお目覚めか?」

 枕元に置いておいたスマホで時間話確かめようと手を伸ばすと、上から低い声が落ちてきて、一気に眠気が吹っ飛んだ。

 昴生さん……!?

 がばっと身体を起こすと、頭に何かがぶつかる。


「っ……、おい、何すんだよ」

 ゴチンと思いきり頭突いてしまったのはどうやら昴生さんのおでこで。額を押さえた彼が、思いきり眉間を寄せながら睨んできた。

 スマホで時間を確かめると、今はまだ朝の八時。

 私が眠っていたベッドの端に足を組んで座っている昴生さんの姿に動揺する。

 一瞬夢でも見ているのかと思ったけれど、私を睨んでくる彼の目力の強さはおそらく現実だ。

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