その狂女、ミイラ女と化す
母親が医者に突然、話を切りだす。

「あの…この子の臓器を提供できませんか?」

はぁ?

呆気にとられる、わたし。

それって、母親に殺されてしまうってこと?

続くように、父親まで加勢してくる。

「たしか、本人の意志がなくても保護者の同意があれば…可能でしたね?」

医師は困った表情を作りながら、とぎれとぎれ、話していく。

「病院の立場としては…」

「まだ生きている娘さんの臓器を移植して…」

「他のかたに生かしたいのは事実ですが…」

「本当に、それでよろしいんですか?」


そして、あいつまで口をはさんできた。

「彼女はとても心優しい女性でした。きっと本人もそれを望んでると思います」

涙声で、そう訴えていく。

ここまでくるともう役者レベルだね。

つか、だいたいお前がなんで、そこにいる?

それ自体、わたしには信じれないことだった。
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