ダークグリーンに魅かれて
井の頭公園デート
「時に、沙里ちゃん?」

「はい?」

「君、今日1限から?・・・間に合う?」

スマホの時計を見る。ヤバっ、完全に遅刻だ」

「・・・アウト」

にこっ、いたずらそうな瞳で微笑むと、拓巳くんは言った。

「だったら、君の1日を僕に下さい・・・なんて、気障?」

えっ、と言った私の手を取って、歩き出した。ごくごく自然に。

「どこに行くの?」

「井の頭公園・・・ちょうど紅葉がいい頃だよ」

初対面の拓巳くんと公園デート。ほんの20分ほど前までは他人だったのに。

「ちょっ・・・拓巳くん、歩くの早っ!」

私は、割とゆっくり歩く方だ。日頃の運動不足もたたってか、軽く息があがる。

「ごめん・・・女のコと手をつないであるくのなんて、初めてだから」

「う、うそ。初めて?」

「変?」

「変じゃないけど・・・嬉しいけど・・・」

モテそうなのに、という言葉を飲み込む。さきの、あの淋しそうな顔はもう見たくない。

「ゆっくり行こう、な?」

そう言うと私に合わせてペースダウンしてくれた。優しい、な。
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