捨てる旦那あれば拾うホテル王あり~身籠もったら幸せが待っていました~
第一章 挙式予定のハワイまできて式目前で彼と別れました
ぼーっと見ているビーチでは、楽しそうに男女や家族連れが遊んでいる。

……なんで、こんなことになっているんだっけ。

傍らにはでっかいスーツケース。
いかにも今、ハワイの地に降り立ちましたといった出で立ちだ。
事実、今日の昼に着いたばかり。
でもそのときはひとりじゃなかったのだ。

……これからどうしよ。

はぁーっと明るい空気のハワイには不釣り合いな、陰鬱なため息が漏れる。
日本を発ったときは、これからの未来に期待で胸を膨らませていた。
しかし着いた途端、不幸のどん底に突き落とされるだなんて誰が思う?

『俺、お前やめてこの人と結婚するから!
じゃあなー』

笑って手を振りながら去っていった元夫を思い出し、またため息が落ちた。
新婚旅行を兼ねたハワイでの挙式……のハズだった。
しかし飛行機の中で隣に座っていた彼女と意気投合し、私と別れて彼女と結婚することにしたそうだ。
それに私が反対したかといえば。

『あ、そう、なんだ。
お幸せに、ね……』

なんて曖昧に笑って送りだす始末。
そうしてホテルも追い出されて今、ビーチで途方に暮れて座り込んでいる。

「どう、しよ」

ため息ばかりが口から落ちていく。
そろそろ私がついたため息で雲ができ、局地的に雨でも降りだしそうだ。

もしかしたら彼が私から離れる予兆は、前からあったのかもしれない。
このひと月は仕事とこの準備で忙しく、それ以外でほとんど顔を合わせなかった。
その間に、いやもっと前から。
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