カラフルハート
プロローグ


 “ 恋をするとね、見える世界が変わるんだよ ”


そう、大好きだったおばあちゃんが教えてくれた。

ずっと不思議だったその言葉は、一瞬にして私を納得させる。
それはまるで、魔法みたいだった。


「鍛治くん、おはようっ」

「あ、天野さん。おはよ」


少しだけ猫背の後ろ姿を見つけると、私は自分の格好を確認して、いつもドキドキしながら挨拶をする。

今まで男の子に挨拶するだけでこんなにも緊張することはなかったし、特定の相手に自分の身だしなみを気にしてしまうなんてことはなかったのに……


眠そうな彼の名前は、鍛治優人(かじゆうと)くん。

笑うと眼鏡の奥の瞳が横に伸びて細くなる。それがまたたまらなく可愛い。

そのくせ身長は180センチ越えの高身長でスタイル抜群である。

寝起きかのようにセットされていない癖毛の髪の毛は、今日もモサッと感を出しているが、絶対教えたくない。

きっと教えてしまったら、鍛治くんは女の子たちの注目の的になってしまうから。


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